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南嶺子

薮に香物といふ事は、〈○中略〉予〈○多田義俊〉尾張に在し時、名古屋より津島へ往とて、海東郡お通りしに、阿波手森といふ処に、薮の中に壺おふせて、往来の瓜茄塩(くはかえん)の賈人、そのわが売る物お納置、香物自然と熟て、瓜茄子に蓼穂お少〈し〉加へて、毎年極月廿五日、熱田社の煤払と、二月初午の日の神供に献ず、両所より献じて其数も委く記置たれ共、無用の事なれば略しぬ、