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矢立墨
粟(あはで)殿の森の香の物,熱田へ献ずる道すがらのさまお一見し度思ひしに、是は夜深く出たち、未明に熱田へ到著し、社家へ渡す由お聞及びしが、文化十四年丑二月四日、いかなるゆへ有て歟、巳の刻過頃本町通りにて行逢て見侍り、珍らしければ援に写せり、〈○図略〉是お持行に、夜更て通行する事は、道にて不浄の者に不逢様のためなりとぞ、図のごとく六つ目籠お組て、上のかたに榊おたて、跡の方に柳にて、長き細き棒の様なるもの附たり、是柳の箸なりとぞ、