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東雅
五/人倫
人ひと 義不詳、上古の語に、ひといひしは、霊也、又善也、とといひしは、止也、所也、ひととは霊の止る所といふが如し、さらば惟人万物之霊などいふ事に、其義自ら合ひぬるにぞあるべき、其神聖の徳あるおば、尊び尚びてかみといひし事は、前にしるせり、総言へばかみといひ、ひとといふ、共にこれ其善お極め雲ふの称なるべし、〈古語にひといひしは、霊の義なるよし、前の日の註に見えたり、善也といふ事は、万葉集抄に見えたり、古の語に、ひとといふ事お、ととのみもいふ、旧説につといふは、猶人といふが如しともいひけり、つといひとといふが如きは、即語の転ぜしなり、〉