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物類称呼
五/言語
他(ひと)おさしていふ詞に、畿内にて吾身(あがみ/○○)といふ、東国にておのし(○○○)、又おぬし、又そなたなど雲、参河にておのさ(○○○)と雲、〈是おのさまの略語なり〉豊前豊後辺にてわごりよといふ、畿内及出雲若狭辺にてわごれ(○○○)と雲、太平記に、和殿(わどの)と有、これらの転語歟、上総にてにし(○○)、下総にていし(○○)と雲、奥州津軽にてうが(○○)といふ、又畿内にておどれ(○○○)といひ、対馬にてあやつ(○○○)、こやつ○○○、又そやつ(○○○)などヽ雲詞は、人お罵る心成べし、〈○中略〉又源氏にすやつ(○○○)、枕草子にかやつ(○○○)、宇治拾遺にくやつ(○○○)など有は、今いふきやつと雲に似たり、又そいつと雲は其奴(そやつ)なり、或はそなたはこなたに対していえる詞也、神代口決に、女(そなた)不忘之と有、和歌には女(なれ)と詠ぜり、これらのことばのたぐひ、かぞふるにいとまあらず、又中品已上の言語は、万国かはる事なきか、こヽに略す、