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陰徳太平記

塩谷興久自害事
軽久の舎弟下野守、其外一門並に家子郎等坐お列して、彼首実撿ありけり、経久平生には、吾齢幾程あらじ、其中に興久が首お一目見て、老後の鬱憤お散ぜばやと宣しが、今此首お一目見られしに、日比は色白く鬚黒にて、いと清気に肥りたる顔ばせの、いつしかあらぬ様に引替たるお、見るや否、あつと計にて、暫は人心地お不付けるお、〈○下略〉