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閑窻自語
右少将公風〈裏辻〉美丈夫事
裏築地少将公風は、やごとなくうるはしく、男女老幼によらず、めでまよひけり、参内の日などおはかりて、ちまたにいでヽまち見る人もありしとぞ、元文三年に、はたちにて四位にものぼらずうせぬ、これは恋ひしたる人々の執念つけるにやと、人いへりけるとなん、この人十五歳までは、中御門院〈于時在位〉のちごにてめしつかはれけるに、いとめづらかなるわらはすがたにて、女房などに多く心おうごかし、なにとなく内もそう〴〵しくて、時議にもかヽりけるとぞ、衛の弥子瑕、漢の董賢にも劣るまじきよそほひにやありけん、