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万葉集
九/挽歌
詠勝鹿真間娘子歌一首〈並〉短歌
鶏鳴(とりがなく)、吾妻乃国爾(あづまのくにに)、古昔爾(いにしへに)、有家留事登(ありけることと)、至今(いまヽでに)、不絶言来(たえずいひくる)、勝牡鹿乃(かつしかの)、真間乃手児奈我(まヽのてこなが)、麻衣爾(あさぎぬに)、青矜著(あおおびつけて)、直佐麻乎(ひたさおヽ)、裳者織服而(もにはおりきて)、髪谷母(かみだにも)、掻者不梳(かきはけづらず)、履乎谷(くつおだに)、不著雖行(はかずゆけども)、錦綾之(にしきあやの)、中丹裹有(なかにつヽめる)、斎児毛(いはひごも)、妹爾将及哉(いもにしかめや)、望月之(もちづきの)、満有面輪二(たれるおもわに)、如花(はなのごと)、咲而立有者(えみてたてれば)、夏虫乃(なつむしの)、入火之如(ひにいるがごと)、水門入爾(みなといりに)、船己具如久(ふねこぐごとく)、帰香具礼(よりかぐれ)、人乃言時(ひとのいふとき)、幾時毛(いくばくも)、不生物乎(いけらぬものお)、何為跡歟(なにすとか)、身乎田名知而(みおたなしりて)、浪音乃(なみのおとの)、騒湊之(さわぐみなとの)、奥津城爾(おくつきに)、妹之臥勢流(いものこやせる)、遠代爾(とほきよに)、有家類事乎(ありけることお)、昨日霜(きのふしも)、将見我其登毛(みけむがごとも)、所念可聞(おてほゆるかも)、 反歌
みづくましけむてこなしおもほゆ勝鹿之(かつしかの)、真間之井見者(まヽのいみれば)、立平之(たちならし)、水挹家牟(みづくましけむ)、手児名之所念(てこなしおもほゆ)、