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大鏡
五/太政大臣兼通
この閑院の大将殿〈○朝光〉は、のちには、この君達のはヽおばさりて、びはの大納言のぶみつの卿のうせ給にしのち、そのうへのとしおひて、かたちなどわろくおはしけるにや、ことなる事きこえ給はざりしおぞすみ給ひし、〈○中略〉この北方〈○朝光継室〉は、ねりいろのきぬのわたあつきふたつばかりに、しろばかまうちきてぞおはしける、とし四十よばかりなる人の、大将には、おやばかりぞおはしける、色くろくて、ひたひにはながたうちつきて、かみちヾけたるにぞおはしける、御かたちのほどおおもひしりて、さまにあひたるさうぞくとおぼしけるにや、まことにその御さうぞくこそ、かたちにあひてみえけれ、