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北条五代記

福島伊賀守河鱸お捕手柄の事
見しは昔、さがみ小田原北条家の侍仁義おもつはらとし、礼儀作法たヾしく、其様厳重に有て形義おみださず、若いやうおこのみ、分限にすぎたる振舞おなす者おば人あざける故、律義おたしなみ、君臣の礼いよ〳〵おもんじ給へり、然にいせ備中守、山角紀伊守、福島伊賀守三人は、氏直はたもとの武者奉行、此等の人は数度の合戦に先おかけ、勇士のほまれおえ、其上軍法おしれる故実の者也ていれば、伊賀守は生れつきこつせんと異様にして大男、大〓(ひげ)有て形体風俗人にかはつていちしるし、