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古事談
一/王道后宮
近衛院御時、〈小六条内裹〉宇治左府参内の間、山上有大袋、其袋動之、以随身被見之処、袋中有人、開見之中将行通朝臣也、出袋共笑て退散畢、此事殿上人遊戯のあまりに、於頭中将教長宿所、為通朝臣鏡お見て、にくしうつくし、為通が鼻はうつくしき鼻かな、后の鼻にしたりともわろからじ、殊勝々々と被自愛けるお、師仲朝臣さる后鼻はあらじぞ、希有の鼻也、まが〳〵しき后鼻かなと雲はれけるに、行通も口入之間、我様なるちひさき人は、袋などに入らばやとて、袋の有けるに、つかみ入て、人々御共にまいれとて、為通袋お持て山の方ざまへ出遊行しに、〈○中略〉此間左府被参、驚前声棄袋於山上逐電雲々、