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大和物語

むかしうどねりなりける人、おほみわのみてぐら使に大和の国にくだりけり、井手といふわたりに、きよげなる人の家より、女のわらはべ出きて、此いく人お見る、きたなげなき女、いとおかしげなる子おいだきて、かどのもとにたてり、此ちこ(○○)のかほのいとおかしげなりければ、めおとヾめてその子こちいてこといひければ、この女よりきたり、ちかくて見るに、いとおかしげなりければ、ゆめことおとこし給ふな、我にあひ給へ、おほきになり給はんほどにまいりこんといひて、これおかたみにし給へとて、帯おときてとらせけり、さてこの子のしたりけるおびおときとりて、もたりけるふみにひきゆひてもたせていぬ、このこども六七ばかりに有けり、この男いろごのみなりける人なればいふになん有ける、