[p.0073]
枕草子

うつくしきもの
みつばかりなるちごの、いそぎてはひくる道に、いとちいさきちりなどの有けるお、めざとに見つけて、いとおかしげなるおよびにとらへて、おとななどにみせたるいとうつくし、あまにそぎたる児(ちご)の目に髪のおほひたるお、かきはやらで、うちかたぶきて物など見るいとうつくし、たすきがけにゆひたるこしのかみの、しろうおかしげなるも見るにうつくし、おほきにはあらぬ殿上わらはの、さうぞきたてられて、ありくもうつくし、おかしげなるちごの、あからさまにいだきて、うつくしむほどに、かひつきてね入たるもらうたし、〈○中略〉いみじうこえたる児の二つばかりなるが、しろううつくしきが、二あいのうすものなどきぬながくて、たすきあげたるが、はひ出くるもいとうつくし、やつ九つ十ばかりなるおのこの、声おさなげにて文よみたるいとうつくし、