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倭訓栞
前編十八/登
H とじ 婦女の通称也、とじめともいへり、隋書礼儀志に、承衣、刀人、采女とならべり、是なるべし、倭名抄の説は心得がたし、建暦御紀に、刀自御膳宿台所各別也と見ゆ、万葉集に、ははとじ、おもとじといへるは、老女の称也、吾児のとじなどもいへるは、少女おも称せるなり、日本紀に夫人おおほとじと訓じ、三代実録に、妋人おとじとよめり、薩戒記に、内侍所の刀子などいへるは女官の称、建武年中行事に、内侍所に行幸なりぬれば、御拝とじのとなど申と見えたるは、刀自祝詞など申也、類聚国史に黒刀自広刀自女などいへるは自称也、日本紀に、圧乞戸母(いてとし)などいへるは、称人の辞也、戸母は戸主(じ)の意也、霊異記に、家室おいへのとじとよめり、侍中群要に、上刀自取進之といふ事見ゆ、こも刀子なるべし、刀子の音おも呼り、式に、長刀子、短刀子あり、