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訂正新撰姓氏録

姓氏録お校合たる大むね
一序に、三体三例といふことあり、三体は、神別、皇別、諸蕃にて、誰もよくしれることにて論なし、つぎに三例といふは、出自(○○)、同祖之後(○○○○)、之後(○○)と三つにて、此三つのしるしざまによしあること也、しかれども、今の姓氏録は、抄録の書たる故に、すべてのさまも、みだりがはしく、しどけなきさまのみしたれば、〈天皇の御事おしるせるに、実の大御名おしるせるかと思くば、ゆぐりなく後の御諡おしるせるたぐひ、みだりかはしきこといと〳〵おほし、〉此三例も、分明にはわかれがたき中に出自となるは、枝別之宗、特立之祖おいふとありて、三例の中にも、とりわきて祖事つまびらかに、正しき氏とみゆれば、皇別神別ともに之後などあるに比ては、出自とあるかたは、数もこよなくすくなきお、諸蕃にいたりて、かへりて出自としるせるが、いと〳〵多きは、いとうたがはしきことなるに、一本には、出自とあるは、いと〳〵まれにして、おほく之後とあり、此本よろしきに似たるが故に、今はしばらくそれによれり、之後とあるが、よろしきに似たるよしは、序に祖事陟狐疑、書曰之援といひ、所以弁遠近示親疎、などいへるおもて、かた〳〵諸蕃によしあればなり、〈○中略〉
文化四年夏 安芸国人 源稲彦