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沙石集
三下
小児之忠言事
南都に戒律僧世間になりて、子息あまたありける中に、ことにいとおしくする子五歳の時、知たる上人両三人彼房にゆきて、物語する次でに、此子ちヽがひざの上にいたるお、きやつは不覚の者にて候、これ程に成候て、父とは都て寝候はで、母とのみふせり候といふ時、この子父がひざおついたちて内へ入ざまに、父は我おば母とぬるといへども、父もまた母とはぬるめるはと雲、実にさもと覚ておかしく、いたいけしたりし由語侍き、