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冠辞考
五/多
たらちねの はゝ
万葉巻三に、帯乳根乃(たらちねの)、母命者(はヽのみことは)、〈○中略〉赤子お育つヽ、日月お足しめ、成人(ひとヽなす)は母のわざ也、よりて日足根(ひたらしね)の母てふお、日お略き、志(し)お知(ち)と通はせ、根てふほめ語お添て、たらちねの母とはいふ也、〈根は物の本なれば、古へは人の名にもほめていひたり〉天皇の御名にも、皇子にも、息長足(おきながたらし)、倭足(やまとたらし)、五十日足(いかたらし)など申も、その生しなし奉る乳母の氏、或はそだちませる地の名などお付申せし也、且紀に、治養持養などの字お比多須(ひたす)と訓も、日須良須(ひたらす)お略ける語なるおおもへ、