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松屋筆記
十二

近頃の人のあらはせし歌の書に、平人の妻お某室と書たり、いといはれなき事也、有職問答四の巻に、北政所(○○○)或はなにがしの室などいふ事は、関白の室に限るよし見ゆ、桃花蘂葉には、大臣の妻お室といへる例あり、されば室とは必三公の北方ならではいふまじき称也、後室などいふも、三公の未亡人の称と見ゆ、愚管抄には、政子の事お頼朝が後家(○○)と書れたり、