[p.0154]
空穂物語
忠こそ
北方の御帳のうちに、おまし所して、御とのごもりなどするに、〈○中略〉
としふれどわすれぬ人のねしとこぞひとりふすにもうれしかりけるとて、おましおうちはらはせてふしたまへば、たヾこそ、
ねし人もなみだのうへにふす物おやどのしたにはかずもかへなん、こヽはちかげの大殿、かくてひさしくおとヾ一条殿へまうで給はず、たヾこそあこ君のもとへ時々かよふお、まヽはヽの北方うらやましとおぼしけれど、いとかたおもひなり、