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橘庵漫筆
初篇二
畿内の賤民婦おさして衒妻と呼べり、或曰、左伝昭二十二年に有仍氏の女の美色おいへるに玄妻と雲、よつて玄妻の字にして、左伝より出たりといへり、例の文華によつて、鶏お割に牛の刀お用るにいたれり、按るに、字書に、鉉は売也とあれば、賤しき婦おさして、売婦(ばいふ)とおとしめ雲ことばなり、鉉妻か衒妻なるべし、東都にて、傾城奉公人の肝煎する者お女衒と雲も、衒は售なれ、