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太閤記
十六
醍醐の花見
長束大蔵大輔、茶屋は晩日に及ぶべきお兼て期せしに依て、御膳の用意なり、将軍この茶屋へ成せられ、饗膳あらば急ぎ上よと仰しかば、大蔵大に悦び則上奉る、〈○中略〉見せだなにありつる瓢簟お御腰に物し給へば、是もかはりお被下候やうにと乞つヽ、茶屋のかヽ(○○○○○)廿ばかりなる二三人両、の御手にすがり、おあし給り候へ、すまさせ給へとて、笑おふくみかけ申せば、秀吉公もことの外打えませたまひつヽ、さらば算用おとげ御すまし有べきとて、内へ入給ひしが勘定の声はなくて、御酒宴と見えて、目出たや松の下千世も幾千代ちよ〳〵などいふ小歌の声々に、〈○下略〉