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古事記伝

伊呂勢(いろせ)、中巻下巻には伊呂兄と書り、同母兄お雲なり、伊呂とは、本愛しみ親しみて雲言なり、此事中巻浮穴宮段、常根津日子伊呂泥命の下〈伝廿一の十のひら〉に委く雲り、考ふべし、〈師(賀茂真淵)説に、伊呂は家等にて、万葉十四東歌に、伊波呂(いはろ)と雲るこれなり、さて同母の子は、母と共に同家に在る故に、伊呂母(は)伊呂兄(せ)伊呂弟(と)伊呂姉(ね)と雲なりとあり、是ぞ古のさまおよく得られたるものと、さきには思ひしかど非ざりけり、〉さて此命は御弟なれども、男命なる故に兄と詔ふなり、其由は上〈伝六の九葉〉に雲り、上に天照大御神の大御言にも我那勢命とあり、