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古事記傅
二十
庶兄は字鏡に庶兄万々兄(まヽせ)とあり、如此訓べし、〈上巻に庶兄弟とあるおば、たゞ阿爾於登杼母と訓たりき、彼は異母兄弟等お凡て雲る、其お麻々某といふ称お知ざればなり、又書紀妥靖巻に、庶兄おいろね、用明巻に、庶弟なはらがおと訓るなどは皆当らず、〉又同書に、嫡母万々波々、〓万々妹などもあり、〈漢国にて、庶字は嫡に対へる称にして、嫡妻の生る子お嫡子といひ、妾の生るお庶子といふ、されば庶兄とは、嫡妻の生る弟の、妾の生る兄おいふ称なり、此も其定まりの如く庶兄と書り、然れども皇国にては、嫡庶お論ず、凡て異母の兄弟お麻々兄麻々弟と雲けむこと、彼字鏡に嫡おも庶おも万々とあろにても知るべく、又和名抄に、継父万々知々、継母万々波々と見え、又古も今も、非所生子お麻々子と雲、今言に非所生親子(なさぬおやこ)の問お麻々志伎中(まヽしきなか)と雲り、〉