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古事記伝
二十二
男は牟須古(むすこ)、女は牟須売(むすめ)と訓べし、〈牟須古と雲称、古書には見えざれども、中昔の物語文どもには、貴きにも賤きにも、常に雲ふ称なり、牟須古能君だちなども雲り、牟須売は、書紀の訓などにも多く見えて、是又中昔も今も、常に雲称な、り、然れば此に対へて、男子お牟須古と雲も、もとより古言なること疑なし、然るお牟須古牟須売とは、世に遍く雲なれて、古言めかざる故に、書紀などの訓には、多くおのこめのこと附たり、和名抄には、男子女子とのみ挙て、和名はなし、字鏡にも見えず、〉