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空穂物語
藤源の君
むかし藤原の君ときこゆる一世の源氏おはしましけり、〈○中略〉きさいの宮、三条大宮のほどに、四丁にていかめしき宮あり、〈○中略〉こヽにうつり給て、ひとかたには大井殿の御むすめ、おとヾまちには宮すみ給ほどに、おほんこどもうみ給、ことかずあまたになりぬ、大井殿のおとこよところ、女いつところに、宮の御はらに十五さいよりうみ給おとこやところ、女九ところ、まづ宮おほい君、太郎、次郎、三郎、四郎、とりつヾきうみ給ふ、大殿の御方五郎、六郎とうみたまふ、宮七郎、八郎とうみたまふ、大井殿に中の君、三の君、四君、宮五六七入九十さしなちびにうみ給へり、又おほいどのに、十一、十二の君、宮十三、十四のきみ、又さしつヾき、おなじ年のおとこぎみふたところながらうみ給、かたみにからみおはしましなどすれど、御中うるはしくきよらなる事かぎりなし、〈○中略〉かくて太郎君左大弁たヾずみ年三十、次郎ひやうへのすけもろずみ年廿九、これ二人ながら宰相なり、三郎右近の中将蔵人のとうすけずみ年廿八、四郎右衛門佐つらずみ年廿七、これは宮の御はら、大井殿の御はらは五郎兵衛の佐あきずみ年廿六、六郎兵部のたゆふかねずみ年廿五、宮の御はら七郎じヾうなるずみのおなじ年、八郎大井殿のたゆふ九郎式部のぜう殿上人きよずみ年廿二、宮の御はらの十郎兵衛のぜうの蔵人よりずみ廿、大井殿の御はら十一郎ちかずみ御おんな宮の御はらのおほいぎみは、御せうとの今のみかどにつかうまつらせ給けり、
○按ずるに、太郎二郎等の事は、姓名部名篇お参照すべし、