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源平盛衰記
二十八
頼朝義仲中悪事
木曾此事お聞て、郎等共お招集て評定あり、〈○中略〉今井四郎兼平が儀には、兵衛佐殿と終に御中よかるまじ、故帯刀先生殿おば、悪源太殿討給ぬ、意趣定て御座らんと、佐殿も思召らん、幼き御曹司お他所に奉置て、所々にて思召さんも心苦し、平家お討んと雲も、御家門の為也、隻一度に思召切て兎も角も、成給へと申、此曹子と申は、今井四郎兼平が妹の腹也けり、去ば木曾が為には、乳人子お思お儲たる子生年十一にぞ成ける、