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落窪物語

今はむかし、中納言なる人の、むすめあまたおもちたまへるおはしき、大君、中の君には、むことりして、西のたいひがしのたいに、はな〴〵としてすませたてまつり給ふに、三四の君に裳きせたてまつり給はんとて、かしづきそし給ふ、又とき〴〵かよひ給ひけるわかう〈○う一本作ん〉とおりばらの君とて、はヽもなき御むすめおはす(○○○○○○○○○○○○)、北のかた、こヽろやいかヾおはしけん、つかうまつるこだちのかずにだにおぼさず、しんでんのはなちいでのまたひとまなる、おちくぼなるところのふたまなるになんすませ給ひける、きんだちともいはず、御かたとはまもていはせたまふべくもあらず、名おつけんとすれば、さすがにおとヾのおぼす心有べしとつヽみ給ひて、おちくぼの君といへとのたまへば、人々も、さいふまヽにて、わりなきことおほかりけり、