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嬉遊笑覧
附録
蘭州瑣語雲、聞、京師六七十年前、有呼拾赤子者、貧民子衆、即付貲予之、乃出門又呼売赤子、欲子者復以財易之、後官禁之、蓋以有不售而殺之者、又有婦人、呼曰、織男子、擁機杼之具、随後続呼曰上工、亦官禁之、蓋有売淫者也、こヽに六七十年已前といへるは、元禄中にあたる、子お拾ふにはあらず、これは乳子買と呼るものにて、職人絵本に、図も出て注して雲ふ、子お生して思案あるおば、里につかはすは、昔よりの習ひなるべし、然れ共いづくに里子おあづかるとさだめがたきは此事なり、然るお乳お持たる女、里子とりたいのぞみなれば、其者の肝煎にたのむ、その肝いりお乳子買と雲なり、折節入口の当なければ、則彼乳ある女お引連て、何所おさすともなく町町にてちごかはふとわめきめぐる也、かやうの女幾人もありく事なれ共、それ〳〵の機縁ありて子お養ふ、殊に広きは都のうちぞかしと雲へり、