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平安落穂集

捨子之事
延享之頃、今出川通り近衛殿の塀の外面に捨子ありしお、御裏なる姫君の御方聞し召、不便に思召、ひろわせて育させ給ひし、其北側冷泉家の屋敷なりしが、此事お為村卿よみ給ふ、
捨し親の嘸すてかねて捨つらん捨られし子のあぢきなき声、となん、又享保の末の頃、かたじけなくも、霊元帝、捨子といふ事叡聞に達せしかば、
哀なれ夜半に捨子の泣止むは親に添寝の夢や見つらん、と遊ばされしぞ有がだき、