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北条五代記

房州里見家の事
見しは今、安房上総は南の海中へうかび出、たヾ島国とおなじ、此両国お里見の家数代持つヾけ、君臣相伝り長久の国なり、然るに隣国下総の国と代々たヾかひて、ついに無事なる事おきかず、去程に、両国の侍親おうぢ孫ひこやしは子の末迄も、他国お見たる人なし、是誠に希代のためしなるべし、古歌に、
親のおや子の子の子まで山賤のほたの火けたで形見とぞする、とよめるも、是にたぐへて思ひ出せり、