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平治物語

牛若奥州下事弟牛若は、鞍馬寺の東光坊阿闍梨蓮忍が弟子禅林坊阿闍梨覚日が弟子に成て、遮那王とぞ申ける、十一の年とかや、母の事お思出して、諸家の系図お見けるに、げにも清和天皇より十代の御苗裔、六孫王より八代、多田満仲が末葉、伊予入道頼義が子、八幡太郎義家が孫、六条判官為義が嫡男、前左馬頭義朝が末子にて候なり、何にもして、平家お滅し、父の本望お達せんと思はれけるこそ懼けれ、