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源平盛衰記
四十三
二位禅尼入海並平家亡虜人人附京都注進事
二位殿、今は限と見はて給にければ、練色の二衣引纏、白袴のそば高く挟て、先帝お奉懐、帯にて我身に結合進せ、宝剣お腰にさし、神璽お脇に挟て艇に臨給、〈○中略〉今ぞしる御裳濯河の流には浪の下にも都ありとは、と宣ひもはてず、海に入給ければ、八条殿、同〈く〉つヾきて入給にけり、国母建礼門院お始奉て、先帝御乳母帥典侍(○○○○○○○○)、〈○平時忠妻〉大納言典侍已下の女房達、船の艫舳に臥まろび、声お調て協給ふも火し、軍喚にぞ似たりける、浮もや上らせ給と、暫しは見奉〈り〉けれ共、二位殿も八条殿も深沈て不見給、〈○下略〉