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枕草子春曙抄
一むくろとはくびより下の名歟
日本紀には体の字おむくろとよめり、心くびより下にあたれる歟、仁徳天皇御宇八十九年、飛騨国有一人、曰宿儺、其為人壱体有両面、〈○中略〉四手並用弓矢と雲へり、難波根子武振熊と雲人つかはして、此お誅せられにけり、又身字おむくろとよむ、身体二字ともにむくろなり、人にもかぎらず、木にも雲ふ、古詩雲、心空身未摧と雲へり、古木の事なり、心体と二にふくる日は、かならずしも体の中えかしらのこもるべきいはれなし、五体の中には頭その首たるゆへなり、されども宿儺事に、ひとつむくろに二のおもてありと雲にては、かしらはむくろと別なりときこゆるなり、