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陰徳太平記

興久被斬化者事
変化の者今夜切たり、跡お認て見よやと下知せられけれ共、のり(○○)などおも不引ければ、何処おさして尋ぬべき様もなし、興久正しく縁の下へ入たる様に覚えたりと宣間、即縁の下へ入て見るに大なる穴あり、頓て是お堀て見れば、二丈余りほり入て、底に高さ九尺許なる五輪一基、三尺許の五輪二つぞ有ける、小さき五輪の頭には血付たり、これ興久の打れける時、拳の皮剥たるなり、又大きなる五輪には、頭に大刀の瘢二つありけり、