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増鏡
七/北野の雪
西園寺の大おとヾ〈公相〉なやましくし給ふとて、山々寺々修法読経、まつりはらへなどかしがましくひヾきのヽしりつれど、それもかひなくて、十月〈○文永四年〉十二日うせたまひぬ、〈○中略〉御わざの夜御棺に入給へる御かしらお、人のぬすみとりけるぞめづらかなる、御顔のしもみじかにて、中半ほどに御目のおはしましければ、外法とかやまつるに、かヽるなまかうべの入事にて、なにがしのひじりとかや、東山のほとりなりける人とりてけるとて、後にさたがましく聞えき、