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安斎随筆
前編六
額字の訓 和名抄に比太比とあり、又䭮字の註に、俗雲奴加加美額前髪也とあり、又掻額おぬかヽきと訓せり、又額田お沼加多と訓ぜり、然ればひたひとも、又ぬかともよむなり、頓首おぬかづくと雲ふは、額お地に突くなり、また叩頭虫おぬかづき虫と雲ふ、其尻お押ゆれば頭お動して、人の頓首の形ちの如くするゆへ、ぬかづき虫と名づけ、然るに俗に米つき虫といふは額おぬかといふお知らずして、米の糠の事お思へる也、又武用弁略といふ書に、楼頭の字お出し、和名抄お引きて、沼賀々既と訓お記して、馬の秣の糠お掻き交る器也と註せり、是又額と糠との取違也、楼額は馬の額に掛くるなり、