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枕草子

大蔵卿〈○藤原正光〉ばかりみヽとき人なし、誠に蚊の睫のおつれるほども聞付給ひつべくこそ有しか、職の御さうしの西おもてに住し比、大殿の四位少将と物いふに、そばにある人、此少将に扇のえの事いへとさヾめけば、今彼君だち給ひなんにおと、みそかにいひいるヽお、其人だにえきヽつけで、何とか〳〵とみヽおかたぶくるに、手おうちて、にくしさの給はヾ、けふはたヽじとの給ふこそ、いかで聞給ひらんとあさましかりしか、