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太平記

南都北嶺行幸事
彼堂〈○大講堂〉と申は、深草天皇の御願、大日遍照の尊像也、中比造営の後、未だ供養お遂ずして、星霜已に積りければ、甍破ては霧不断の香お焼、扉落ては月常住の灯お挑ぐ、されば満山歎て年お経る処に、忽に修造の大功お遂られ、速に供養の儀式お調へ給ひしかば、一山眉お開き、九院首お傾けり、