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太平記
二十一
塩冶判官讒死事
師直此返事お聞しより、いつとなく侍従お呼て、君の御大事に逢てこそ、捨んと思つる命お、詮なき人の妻故に空く成んずる事の悲さよ、今はのきはにもなるならば、必侍従殿おつれ進て、死出の山三途の河おば越んずるぞと、或時は目お嗔て(○○○○)雲ひおどし、或時は又顔お低て雲恨ける、〈○下略〉