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十訓抄

御堂関白〈○藤原道長〉物へおはしけるに、道に荷負馬の先に立たるに、小童の手に文おさヽげてよみけるお、あやしとおぼして、ちかくめしよせて御らんじければ、眼に重瞳(○○)有て、いみじく賢き相のしたりければ、やがてめして、匡衡につけて、学問おせさせられけるほどに、後には大江時棟とて、広博才覧の文士なりければ、君に仕へて伝士の道おつげり、養生の方おさへ樽て、寿考の人たりき、