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続古事談
二/臣節
道方の民部卿頭左中弁とて、位階の上藺にてありけるに、おの〳〵望み申けるに、道方なるべしときヽて、説孝わきの陣の床子の座にて、南に向て念じ入たりけるに、夢のごとく春日山おみて頼もしく思て、道方に雲やう、いかでか我おこえ給べきとて、涙おのごひたりければ、血の涙にてそでにつきたりければ、通方おそれおなして、このたびはなるまじきよしお申けり、此説孝は左大弁までなりたりけるに、三条院東宮御時みくりやの事によりて、びむなくおぼしめされたりければ、昇進かなはじとや思けん、弁おすてヽ播磨守になりたりけり、