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徒然草

あらはるヽおもかへりみず、口にまかせていひちらすは、やがてうきたるごとくきこゆ、又我もまことしからずとはおもひながら、人の雲しまヽに、鼻のほどおこめきていふは、其人の空ごとにはあらず、げに〳〵しく所々うちおぼめき、よくしらぬよしヽて、さりながらつまづまあはせて語る空ごとは、おそろしき事なり、わがため面目あるやうにいはれぬるそらごとは、人いたくあらがはず、