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落窪物語
六/末摘花
まづいだけのたかう、おせながに見えたまふに、さればよと、むねつぶれぬ、うちつぎて、いなかたはとみゆるものは、御はな成けり、ふとめぞとまる、ふげんぼさちののりものとおぼゆ、あさましうたかうのびらかに、さきのかたすこしたりて、色づきたる事、ことのほかにうたてあり、いろはゆきはづかしくしろうてさおに、ひたひつきこよなうはれたるに、なほしもがちなるおもやうは、大かたおどろ〳〵しくながき成べし、やせ給へること、いとおしげにさらぼひて、かたのほどなどは、いたげなるまで、きぬのうへまでみゆ、なにヽのこりなうみあらはしつらんと思ふ物から、めづらしきさまのしたれば、さすがに打みやられたまふ、かしらつき、かみのかヽりはしも、うつくしげにて、めでたしと思ひきこゆる人々にも、おさ〳〵おとるまじう、うちぎのすそにたまりてひかれたる程、一尺ばかりあまりたらんとみゆ、