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徒然草

或人清水へまいりけるに、老たる尼の行つれたりけるが、道すがらくさめ〳〵といひもて行ければ、尼御前何事おかくはの給ふぞと問けれども、いらへもせず、猶いひやまざりけるお、度々とはれてうち腹だちて、やヽはなひたる時、かくまじなはねば、死ぬるなりと申せば、やしなひ君の比叡山に児にておはしますが、たヾ今もやはなひ給はんと思へば、かく申ぞかしといひけり、有がたきこヽろざしなりけんかし、