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枕草子

わかき人々はたヽいひにくみ、見ぐるしきことどもなどつくろはずいふに、此きみ〈○藤原行成〉こそうたて見にくけれ、こと人のやうにどきやうし、うたうたひなどもせず、けすさまじなどそしる、さらにこれかれに物いひなどもせず、女はめはたてざまにつき、眉はひたひにおひかかり、はなはよこざまにありとも、たヾ口つき(○○○)あいぎやうづき、おとがひのした、くびなどおかしげにて、こえにくからざらん人なんおもはしかるべき、とはいひながら、猶かほのいとにくげなるは心うしとのみの給へば、まいておとがひほそくあいぎやうおくれたらん人は、あいなうかたきにして御前にさへあしうけいする、