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太閤記

秀吉初て普請奉行の事
或時清洲の城郭塀百間計崩れしかば、大名小名等に急ぎ掛直し可申旨被仰付しか共事行ず、〈○中略〉秀吉千悔し此節は高塁深塹すべき時也、〈○中略〉如此延々に掛る事招禍に似たり、危事かなとつぶやきけるお、何とかしたりけむ、信長公きこしめし、猿めは何お雲ぞ、何事ぞと問給へ共、さすが可申上義にあらざれば、猶予し給へる処に、是非に申候へとて、かひなお取てねぢかヾめ給ふ、有のまヽに申せば宿老共お讒するに似たり、又申さねば、君の仰お背に似たり、呼、口は禍門なりと世の諺に伝へし事、今おもひあたりたり、〈○下略〉