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独語
人生れて赤子の時は、諦きて声お出だす、二三歳より声お上げて呼吸す、四五歳より人おしへざれども、いつとなく歌謡おまなびて、かた言なる童謡おとなへのヽしる、是皆自然なり、人としては声お出だして湮鬱お宣ぶるわざなくてはあられぬゆえなり、されば人ぱ何にても、少し声お立つるわざお、おり〳〵なさでかなはぬは天性なり、悦ぶこと悲むこと楽むことに付けて、それ〴〵に声お立つるは、やむことおえざるわざなり、賤者の力わざにても、声お立てヽはげむは常の習也、