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古事記伝

唾出者は、都婆伎伊陀志賜閉婆と訓べし、和名抄に、唾和名豆波岐と見え、字鏡に、誕口水也、液也、唾也、与太利、又豆波志留、また液小児口所出汁也、豆波支などあるは、みな其物お雲ば、体言なるお、今は用言にいへり、〈さて此都婆伎てふ言に疑あり、そはまづ今世にも、口水にたまる水お津(つ)といへば、唾は津吐の意なるべし、然るに津字も、都と雲言も、もと船の泊る所の名なれば、それより転して、津液の津おも都とは雲か、若然らば古言にはあらで、津字より出たる言なり、されど唾はたゞ吐とはことのさまひとしからねば、都婆久と訓むほかなし、〉