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陰徳太平記
五十六
上月合戦之事
熊谷信直は、周防富田の若山に在、杉原盛重は援許にあり、此外には誰か自身の勇お閣て、味方の合戦勝利の全き謀お成者あらんと思ける所に、一隊の勢三百許にて、上なる山へ馳上る、誰なるらんと見れば、真先に進たる武者抛頭(○○)也、すは天野紀伊守隆重なるらんと思ふに、如案隆重備お堅くして味方の機おぞ助ける、