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大和物語

平中〈○中略〉此女いかにおぼつかなくあやしと思ふらんと恋しきに.〈○中略〉人なむきてうちたヽく、たそととへば、なほそうのきみに、ものきこえんといふ、さしのぞきてみれば、この家の女なり、むねつぶれ(○○○○○)てこちこといひて、ふみおとりてみれば、いとかうばしきかみに、きれなるかみお、すこしかいわがねてつヽみたり、いとあやしうおぼえて、かいたる事おみれば、 あまの川そらなるものときヽしかどわがめのまへのなみだなりけり
とかきたり、あまになりたるなるべしとみるに目もくれぬ、心きもおまどはしてこのつかひにとへば、はやう御ぐしおろし給てき、かヽれば子だちも昨日けふいみじうなきまどひ給ふ、げすの心ちにもいとむねいたくなん、さばかりに侍りし御ぐしおといひてなく、