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源平盛衰記
二十二
入道申官符事
入道〈○平清盛〉が私の敵にてもなし、隻君の仰お重ずる故にこそあれと思ひ存して、流罪に申宥て、伊豆国へ下し候ぬ、其年十三と承き、かね付たる小男の、生絹(すヽし)の直垂に、小袴著て侍しお、入道が前に呼居て、事の様お尋問候ひしかば、如何ありけんの事の起りしらずと申候き、げにも幼稚なれば、よもしらじなんと、青道心おなして候へば、今は哀(あわれ)は胸おやく(むね/○○○○)と申たとへに合て侍り、定て聞し召れ候らん、